【海外進学】大学院生に必要な英語力はどれくらい?

この記事はこんな方におススメ!
  • 海外の大学院へ進学を検討している方
  • 大学院生活で必要な英語力を知りたい方
  • 大学院に入学する前にできる英語の練習方法を知りたい方

ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。

今回は、『社会人』と『学び』に関する内容をお届けします!

コロナ禍で、社会人の学びへの関心が加速しています。
2022年にリクルートが公開した『学びに関する意識・実態把握調査』によると、20代と30代の社会人の男女のうち、4割弱が社会人向け大学・大学院への進学に関心を寄せていることがわかりました。

働き方の多様化にも伴って、キャリアップ、選択肢を広げるために『学び』に積極的な社会人が増えているようですね。

そこで、フルタイムで働きながらイギリスの大学院を修了した私が、出願時に必要な英語のレベル、それから大学院生として実際に必要な英語力をお伝えしていきます。

【出願時】TOEFLやIELTSで考える英語力の基準

大学院に出願するために必要な英語力は、専攻や国によって大きく異なります。
そこで、出願時に必要な英語力を証明する試験として一般的なTOEFLとIELTSのスコアを例にとり、解説していきます。

入学時に必要な英語力とは?

まずは、TOEFL90点、IELTS6.5が基準になります。
スコアがそれに満たない場合は、英語力を上げるためのファウンデーションコースで英語力を鍛えたうえで、入学する必要があります。

また、世界のトップ校に出願する場合は、TOEFL100点、IELTS7.0以上を目指す必要があります。例えば、社会人の海外進学で一番人気であるMBAを例にとってみましょう。

大学院名英語のスコア
アメリカStanford Graduate School of BusinessTOEFL 100
IELTS 7.0
フランス
シンガポール
INSEADTOEFL 105
IELTS 7.5
スペインUniversity of Navarra (IESE)TOEFL 100
IELTS 7.0
イギリスLondon Business School提出必須だが、詳細は不明
必ずご自分で出願要件はご確認ください。

TOEFL、IELTSいずれも非常に難しい英語の試験です。
海外の大学院で学ぶ以上、高い英語力が要求されることは明らかですね。

TOEFL?IELTS?どっちを選ぶ?

昔はTOEFL、あるいはIELTSでどちらかしか受け入れない大学院もありましたが、今は基本的にほとんどの大学院でどちらも受け入れられているようです。

スコア取得の難易度に顕著な差はありませんが、それぞれ性質が大きく異なる試験であるのは事実です。どちらの試験にするか迷った場合は、こちらの記事を参考にしてください。

なお、イギリスは学生ビザを取得する際にIELTSのスコア提出が必要になるため、結果的にIELTS一択になります。

入学基準の英語力は足切りだと理解

上に挙げたTOEFLやIELTSのスコアは、あくまで志願者の足切りとして使用されます。

なので、出願要件としてTOEFL100点が要求されている大学院に、TOEFL105点のスコアを提出しても、加点要素として評価されることはおそらくないでしょう。

大学院は英語を学ぶ場ではなく、英語で学ぶ場です。
そこで、TOEFL、IELTSのスコア取得者が実際にできることと、大学院で必要になる英語力という観点で比較していきます。

【CEFR】TOEFL90、IELTS6.5でできること

外国語の運用能力を測る基準として、CEFR(セファール;ヨーロッパ共通言語参照枠)という国際的な指標が一般的に使われています。

各試験団体のデータによるCEFRとの対照表

CEFRを基準に見てみると、TOEFL90点とIELTS6.5はB2というレベルにいます。
そこで、CEFRのB2レベルでできることを見てみましょう。

  1. 自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。
  2. 母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。
  3. 幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。

ちなみにB2レベルは『自立した言語使用者』とされています。

また、トップ校で要求されるTOEFL100点、IELTS7.0は、CEFRだと1つ上のC1になります。
C1はこんなことができるレベルです。

  1. いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。
  2. 言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現ができる。
  3. 社会生活を営むため、また学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ効果的に用いることができる。
  4. 複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の、詳細な文章を作ることができる。

大学院でやること(論文やディスカッション、執筆)

入学後は、当たり前ですが大学院生活のほとんどを英語でこなす必要があります。
そこで、実際に大学院生としてやらなければならないことを見てみましょう。

論文の理解

1つあたり、大体20ページから30ページくらいあることが一般的です。
自分の専門の内容であれば、背景知識により内容は理解しやすい可能性もありますが、それでも膨大な量の論文や文献、本を読む必要があります。

講義の理解

基本的には課題である本や論文が読んであることを前提に進んでいきます。
講義で教授が話す英語は、試験のような作られた英語ではありませんし、先に質問を読むこともできません。そんな説明が1時間以上続きます。

ディスカッション

課題を読み込み、講義の内容を理解したうえで、グループワークとして行います。
ただの主張にならないように、当然ながら根拠も示しながら展開する必要がありますし、建設的なディスカッションになるように話し方のマナーも必要です。

レポートや論文作成

期末レポートは5000単語程度、修士論文は12000単語以上書くことが一般的です。
ちなみにA4用紙にすると、修士論文は50枚は超える長さです。さらに、補足資料なども追加すると、なんやかんやで80枚くらいになります。

足切りスコアを取得していても余裕はない!

実際に大学院でやることを見て、感じたかもしれませんが、英語の足切りスコアを取得していても、余裕はまったくないと言えます。

私自身も大学院入学時はIELTS7.0でしたが、恥ずかしながら毎回の課題についていくので必死でした。リーディングは背景知識も多少あり、時間をかければ理解できることも多かったですが、やはりライティングに一番苦しみました。

学部時代は卒論を英語で書いた経験はありましたし、英語学習者の中では上位にいると思い、調子に乗っていましたが、一瞬でその自信は打ち砕かれました。

足切りスコアは、足切りスコアでしかありません。
英語でできることを1つでも増やしておく必要がある。そういうことです。

【合格後】大学院入学までが勝負!

ここからは、足切りスコアを達成し、見事合格の切符をつかんだことを前提として、そこからできる英語力アップの方法を共有します。

私が大学院生になったあとで、「入学前にこんなことをしておけばよかった・・・」という内容でもあり、充実した留学生活を送った友人の体験談も参考にしています。

教授に連絡し、コースの情報を得る

ひとたびコースが始まれば、膨大な課題に追われます。
毎週のリーディングの量もとんでもないことになります。そこで、入学前に準備できることはやってしまいましょう。

大学のHPには、教授の連絡先が公開されていることがほとんどです。
そこで、入学のあいさつも兼ねて、コースで使用する教材や事前に取り組んでおいたほうが良いことを聞いてみましょう。

返事をくれない教授もいますが、丁寧に教えてくれたり、コースのハンドブックを共有してくれる教授もいます。

背景知識の獲得

大学院では、図書館にある本はもちろん、さまざまな論文などのデータにもアクセスできるようになります。ですが、当然ながらすべて英語の内容です。

じっくり頭を悩ませながら読むとしても、事前に背景知識があればスムーズに理解できるずです。そこで、日本語で専門分野に関連する本や論文などを事前に読んでおきましょう。

専門的な本は、図書館で調べてみるのがおススメです。あまりkindleにはないことが多いです
また、論文はGoogle Scholarで検索すれば、フリーで読めるものもあります。

大学院は英語で学ぶ場で、結果的に英語力そのものを身につけることができるところです。
事前に日本語で背景知識を身につけておけるなら、大学院生活がスムーズに、かつ有意義なものになるのは間違いありません。

アカデミックライティングの理解

TOEFLやIELTSとは異なり、大学院で書く期末のレポートや論文は、分量もさることながら、好まれる形式があります。

例えば、巻末にはReferenceという参考文献をのせる必要があるのですが、この書き方もAPAスタイルと言い、いろいろなルールがあります。自由に書いて良いわけではなく、いわゆる常識的な書き方にのっとって書く必要があります。

入学後、ライティングの書き方は多少レクチャーがありますが、事前に知っておくだけでいろいろと負担は減ります。YouTubeに参考文献の書き方をレクチャーしている動画もありますし、本も出版されていますよ。

できれば、事前に日本語で情報収集しておくことがおススメです。

ディスカッション練習

ディスカッションの練習では、手軽に使えるオンライン英会話がおススメです。
また、講師はあえてNative Speakerにこだわる必要もないと思います。

むしろ、留学先では様々な国から来た留学生とディスカッションが必要になります。
特に、インドや南米系のアクセントはかなり聞き取りにくいですよね。それでも彼らはどんどん主張をします。

英語のNative Speakerかどうかに関わらず、ディスカッションができるコミュニケーション能力は必須です。そこで、先生は社会人経験の長い大人を選びましょう。そして、英語をコミュニケーションのツールとして使い、意見の交換をしましょう。

オンライン英会話の上手な使い方や、スクールの選び方もたくさん記事にしています。この記事の最後に紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

海外の大学院で必要な英語力、イメージできたでしょうか。

まずは出願し、合格の切符をつかむためにはTOEFLやIELTSの勉強が欠かせません。
ですが、それらの試験のスコアはあくまで足切りのスコアです。その先の大学院生活で必要な英語力を考えて、事前にできる準備はたくさんあります。

より充実した大学院生活にしてください!