ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。
前回に引き続き、第二言語習得論を取り上げて、今日からの英語学習に生かせるように完全解説していきます。
「性格的にシャイだから、英語も上手に話せないかも・・・。」
「学校の勉強は苦手だったから、英語も自信がない・・・。」
こんな疑問、お持ちじゃありませんか?
今回は、センスや頭の良さ、他にも性格などの個人的な要因と英語学習との関係を考えていきましょう。第二言語習得論では、そんな内容も研究されています。
ちなみに前編をまだ読んでない方は、先にこちらからどうぞ。
目次
SLA的視点4.英語学習に向いている人とは?
英語のセンスと言われたら、皆さんはどんなものを思い浮かべますか?
英語を身につけるスピードや、文法などの理解の速さでしょうか。それとも、言葉では表せないようなネイティブの感覚を理解できる力でしょうか。
センスは頭の良さとも結びついている気がしませんか?
ここでは、外国語学習適性テストの存在と、頭の良さ(IQ)との関係を考えてみましょう。
センスを測る外国語学習適性テスト(MLAT)
外国語学習の適性を測るテストがあることに、ビックリした方もいるかもしれません。
正式名称はModern Language Aptitude Testと言いますが、こんなテストがあるんです。
このテストでは、以下の4つの指標から外国語学習の適性を測るそうです。
- 音に関する俊敏さ
- 文法に関する敏感さ
- 意味と言語形式のパターンを見出す能力
- 丸暗記する能力
例えば、歌が上手な方もいれば、苦手な方もいるように、音声に関するセンスは英語に生かせます。リスニングもそうですし、発音も上手にできるかもしれませんね。
また、文章を見て文法規則をすぐ発見したり、単語や文法の適切な使い方に気づける方もいます。そんな方は英作文でネイティブのような英文が書けるかもしれません。これらの項目のどれかに優れている方は、確かに英語学習のセンスがあると言えそうです。
IQが高い人は、英語もペラペラになる?
ここでは、頭の良さを測る基準としておなじみのIQ(知能指数)テストとの関係を考えてみましょう。
これは結論を先にお伝えすると、メタ言語能力と呼ばれる領域においてはIQが英語学習に有利に働く場合があるということがわかっています。
メタ言語能力とは、言葉を意識して観察できる能力のことを言います。
(例1)Can you tell me how to get to Tokyo station?
(例2)I was wondering if you could tell me how to get to Tokyo station.
この2つの例文を見たとき、東京駅への行き方を聞いてるということはわかりますよね。では、どちらのほうがより丁寧な印象を受けるでしょうか?
なんとなく例2のほうが丁寧な感じがしませんか?
そう感じている方、なぜ例2のほうが丁寧な感じがするのか説明できますか?
過去進行形と組みあわせることで、「〇〇してもらえたら、なんてちょっと思ったんですが」的なやわらか~い依頼のニュアンスが英語でも出せるのでは?
こんなふうに考えた方は、メタ言語能力の高い方です。
このように、分析的視点を持って英語を見ることができるので、英語を身につけるスピードは早そうです。ただし、英会話に直接つながるかというと、そうでもないようですね。
まとめ
確かに、IQの高さやMLATで測る4つの指標が英語学習に有利になるのは間違いなさそうです。特に、IQが高い方は、③意味と言語形式のパターンを見出す能力に長けていることが多いと思います。ですが、英語がペラペラになった方が全員当てはまるわけではありません。
そもそもこれらは学校環境での英語学習をターゲットにしています。
なので、テストや入試問題には確かに有利な感じはしますが、それらが英語学習のすべてではありませんよね。コミュニケーションという点においては、IQや適性テストでは測れない部分も多くあるのです。
頭の良さやセンスは、英語学習に有利になる。ただし、英語でのコミュニケーションは他の要素も必要である。
SLA的視点5.自分に合った勉強方法を知る
皆さんは自分にあった勉強のやり方を自覚しているでしょうか?
MLATやIQで測る学校スタイルの勉強だけではなく、いろいろなやり方で英語を学ぶことができます。YouTubeだけで英語が話せるようになる方もいるくらいです。
ここでは、英語学習のやり方を『学習スタイル』という言葉で表します。
学習スタイル(Learning Style)おは、新しい情報とスキルを吸収・処理・保持するときの自然で習慣的で好みに合う方法である。
Reid, 1995
学習スタイルの種類
学習スタイルは自分に合うものと合わないものがあります。
「英語なんてムリかも・・・」
仮にIQやMLATの指標から見て、こんなことを思っても安心してください。学習スタイルは1つではなく、たくさんあります。その中で、自分に向いているものも必ずあります。
例えば、動画や実際に自分の目で見てみる体験が適している視覚的(Visual)学習者もいれば、Podcastなどの音声からの学習が適している聴覚的(Auditory)学習者もいます。
それから身体を使って動きながら身に着けていく運動感覚的(Kinaesthetic)学習者もいるんです。ちなみに子どもへの教え方では、身体を動かしながら覚えていくTPR(Total Physical Response)なんていう教え方もあるんですよ。
自分に合った学習スタイルの見つけ方
自分に合った学習方はを見つけるために、次の質問を考えてみてください。
皆さんが楽しく続けられていることは何ですか?
これはコーチングの領域でもありますが、自分自身を振り返ってみましょう。
無類のNetflix好きであれば、視覚的に学ぶ学習スタイルのほうが、楽しくかつ効果的に続けられるかもしれません。逆に、常に音楽を聴いているような方は聴覚的に学ぶことに抵抗がなく、ストレスなく続けられるかもしれませんね。
他にも、とにかくやってみて身体で覚えるタイプの方は、そのまま英語を話す環境に飛び込んでみるといいかもしれません。
ちなみに私はどちらかというと、視覚的に学ぶほうが楽しく英語学習ができます。
私のおススメはVoice Tubeという無料のアプリで、英語を学習する日本人用に作られた最強のアプリですよ。
Voice Tubeでリアルな英語を学んだ内容も記事にしてますので、参考に。
自分が楽しく続けられている趣味などに、学習スタイルのヒントがある。
SLA的視点6.英語に向いている性格!?
英語を話す人は、なんとなく社交的なイメージありませんか?
英語学習と性格の関係、実はこんなことも研究でわかっています。
社交的な人は英語がペラペラになれる?
シャイな皆さん、朗報です!
社交的な性格が英語学習に影響を与えるということは証明されていません。
反対に、あまり多くを語らない観察力の鋭い方が、英語学習で成功を収めることもあります。英語が話せるようになりたいと思っている方が、全員パリピになる必要はないんです。
私の主観も入りますが、「自分はシャイだから・・・」と考える必要はなく、自分の性格に合ったコミュニケーションで問題ありません。当然英語のNative Speakerにも多くを語らず、シャイな方はたくさんいますので、ご安心を。
失敗を恐れないチャレンジ精神は必要!
皆さんはチャレンジ精神が旺盛ですか?
性格と英語学習を考えたときに、抑制(inhibitation)が影響を与えるとする仮説があります
抑制とは自分にとってのブレーキのことです。
言い換えれば、失敗を恐れないチャレンジ精神みたいなもの。性格ではなく、マインドセットのことで、コーチングの領域でもあります。
留学を例に考えてみましょう。
留学したら、間違いなく苦しい経験もするでしょうし、大変なこともたくさん起こります。ホームシックになる方もいますし、英語が話せない自分に劣等感も感じるかもしれません。
それでも留学という決断をするのは、抑制が良い意味で機能せず、前に進むチャレンジ精神のおかげです。
『死ぬこと以外は、かすり傷』
こんなマインドセットの方は、英語学習に限らず仕事やスポーツでも成長スピードは速いです。
気持ちのコントロールを上手に
「自分の英語は本当に通じるだろうか・・・。」
こんな不安は誰もが持つもの。
不安という感情はanxietyと言われ、たくさん研究されています。教室での外国語使用に関しての不安感を測るテストなんていうのもあるくらいです。反対に、コミュニケーションをとろうとする意志(WTC: Willingness to Communicate)もよく取り上げられるトピックです。
英語を話す意志はあるのに、あえて英語を話さない選択をする。
完全に矛盾していますが、実際にこんなことはよく起こります。
自信のなさから生まれる不安感や、話す相手との相性、疲労感なども実は原因になります。
そこで、先ほどお伝えしたチャレンジ精神はもちろん、リラックスできる環境も大切です。仕事終わりの英会話は避けたほうがいいかもしれません。キレイな先生を見つけたり、一杯だけお酒を飲んでオンライン英会話をやってみる、なんていうのもOKです。抑制をゆるめて、自然体で取り組めるかもしれません。
ありのままで、リラックスして取り組むことも大切。失敗しても、問題なし!
まとめ
今回は、個人的な要因に焦点を当てて、第二言語習得論をわかりやすく解説しました。
自分にプレッシャーをかけすぎず、楽しく英語を学ぶことも大切です。さっそく今日からの英語学習に生かしてくださいね!