【第二言語習得論】日本語と英語は赤の他人?

この記事はこんな方におススメ!
  • 本当に英語が話せるようになるのか不安な方
  • 英語学習の仕組みを科学的に理解したい方

ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。

「英語は科学的に勉強しよう!」

最近いろいろなスクールが打ち出しているこの言葉、皆さんも聞いたことがありませんか?
英語の勉強で『科学的』という言葉が使われたときは、大体『第二言語習得論』と呼ばれる研究内容を指しています。

「第二言語習得論ってよく聞くけど、結局どういうこと?」

こんな皆さんの疑問にお答えできるよう、死ぬほどわかりやすく説明をしていきます。
ちなみに私は大学院でTESOL(英語教授法)を学んだんですが、その中で第二言語習得論も学んでいます。最近は第二言語習得論の研究も盛んなので、いろいろな本を読んだりしながら、私も学んでいるところです。

第一弾の今回は、日本語と英語を比較し、どんな特徴があるのかという構造的な観点、さらには文化的な側面からも見てみましょう。

「日本人が英語を勉強するなら、苦労して当たり前!」

「英語の勉強を頑張ってる私は、もう今の時点で拍手喝采!」

この記事を読んだときには、こんな気持ちになっているはずです。
では始めましょう!

第二言語習得論とは?

第二言語習得論とは、Second Language Acquisition(通称;SLA)と呼ばれる研究分野です。
わかりやすく内容を伝えると、私たちがどのようにして第二言語を習得していくのか、そのメカニズムをさまざまな領域にまたがって研究していくものです。

言葉を覚えるというと、言語学を最初に思い浮かべるかもしれませんが、それだけではありません。私たちは社会との関わりの中で言葉を覚えることから、社会言語学とも関係があります。また、私たちのやる気や緊張感なども言葉を覚えるうえで影響がありそうですよね。つまり、心理学とも関係があります。他にも教育学神経科学など複数の領域にまたがって研究していく分野です。

ちなみに第二言語とは、母語以外の言語すべてを指すと思ってくださいね。私たちの場合は、日本語以外はすべて第二言語になるわけです。大学時代に意味もわからず勉強したフランス語も第二言語です。(笑)

第二言語習得論とは、第二言語(外国語)を身につけていくメカニズムを研究する分野のこと。

EFL vs ESL

まずは、日本人にとって英語という言葉がどんな意味をもつか考えてみましょう。
そもそも私たち日本人は英語を必要とする環境にありませんよね。受験や昇進などで、確かに英語のスコアなどは必要になるかもしれませんが、英語がないと生活できないという環境ではありません。今は海外と関わりを持っている会社もたくさんありますが、極論を言えば英語ができなくても日本で生きていけるわけです。

つまり、私たちにとって英語は外国語なわけですね。
こんな環境をEFL(English as a Foreign Language)と言います。

それに対して、フィリピンやインド、マレーシアやシンガポールなどでは英語が公用語化している、あるいはコミュニケーションをとるうえで必須になっています。

ただし、アメリカやイギリスと違い、英語だけでコミュニケーションをとっているわけではありません。自国の言語、民族の言葉に加えて、第二言語として英語を使っているわけです。
そして、英語で教育も行われていることから、英語ができないと生活ができないという環境です。
これをESL(English as a Second Language)と言います。

同じ英語でも、日本人の私たちにとっては、英語はあくまで『外国語』なわけです。
外国語としての英語と、生活に必要な第二言語としての英語では、学習の環境やモチベーションも大きく変わりますよね。

私たちは生活していくうえで英語の必要性に駆られていないという点から、強いモチベーションがないと、なかなか英語学習の継続は難しいと言えます。
そんな中、英語学習にしっかり向き合っている日本人の方々、まずは自分がやっている努力が実はすごいことだと思ってほしいです。
むしろ、モチベーションの変動はあって当然ですし、ときには距離を置きたくなるときもあるでしょう。それは決して悪いことではありませんし、日本人の誰もが抱える悩みなのです。
それに対してどんな対応ができるかを考えていけばよいのです。

日本語と英語は赤の他人!?

言語間距離という指標

私たち日本人が英語を勉強する場合と、オランダ人が英語を勉強する場合、どちらのほうが習得が早いと思いますか?
なんとなく感覚的にはオランダ人のほうが早そうですよね。それはなぜでしょうか?

それぞれの言語がどれくらい似ているのかを言語間距離という指標で表します。
そして、どのようにして言語間の距離を測るかというと、例えば、祖語(そご:その言語の元になる言葉)がヒントになります。祖語が共通していれば、今は別の言語だとしても、大体同じような単語があったり、似たようなスペルを使います。

例えば、ポルトガル語とスペイン語は別の言語ですが、2つの言語は歴史的背景から言語間距離が非常に近く、お互いの言語で何となく意思疎通はとれてしまうと言われています。
ちなみに日本語は漢字だけなら中国語と一部重なりますが、文字以外では違いも多く、意思疎通はとれるレベルではありませんので、決して言語間距離が近いというわけではありません。
それでも、漢字がわかるいうのは大きな武器になるので、中国の皆さんは欧米圏の方々よりも圧倒的に日本語の習得は早いのは事実ですね。

英語と距離が近い言語として有名なのは、フランス語やオランダ語などです。英語はラテン語から派生した単語が半分くらいを占めているそうですが、フランス語も同様にラテン語を起源に持っています。
つまり、言語における親戚関係のようなもので、実際にスペルが同じ単語がいくつもあります。例えば、chance: 機会、place: 場所などは英語でもフランス語でも同じです。当然親戚関係であれば、多少なりとも似ている部分はありますし、何より接するうえで赤の他人より親近感を感じませんか。

ではここで本題に戻りましょう。日本語と英語はどうでしょうか。
お察しの通り、日本語と英語は言語間距離が遠い言語だと言われています。やたらビジネス場面やコロナに関する記者会見で使われる変なカタカナ英語は増えてきましたが・・・。

英語を基準にして、日本語や他の言語との距離を表したデータも実はあるんです。以前も少し紹介したアメリカのFSI (外交官養成所)が出している情報からもわかりますよ。
あえて詳細はここで紹介しませんので、気になった方は【英語 日本語 言語間距離】で検索してみてください。

構造上の違い

日本語と英語の決定的な違いは何でしょうか?
もちろん文字の違いは大きいですが、日本語でもアルファベットは使うので、私たちにとってはアルファベットそのものは難しくないですよね。実は習得に大きな影響を与えている違いは語順です。

日本語では基本的に動詞を含む述部は文の最後にきますよね。
それに対して、英語では主語のあとに動詞にあたる部分が先にきます。なので、日本語と同じ感覚で、覚えた英単語をもとに文を作ろうとすると、順番がごちゃごちゃになってしまうのです。
以下の例文で比較してみましょう。

昨日は妻とマルイへ買い物に行ってきました。楽しかったですよ。
(Yesterday/ with my wife/ went shopping at Marui/ was fun/)

I went shopping at Marui with my husband yesterday. It was fun.

ちなみに日本語は1人称(自分)視点の言葉なので、あえて「私は」的な主語にあたる言葉を使わないことが多いです。それに対して、英語は3人称(他者)視点なので、必ず主語に当たる言葉が必要です。
なので、英語が母語である外国人が日本語を学ぶと、会話を理解するのに非常に苦労するそうです。なぜなら、会話の中の登場人物がはっきりしていないので、「今だれの話してるの?」となってしまうわけです。これはベトナムでもよく言われました・・・。

リスニングにおいても、慣れ親しんた日本語と同じ順番で単語は出てきませんので、頭はフル回転で機能しなければ意味が理解できませんよね。理解するためには最低限の文法知識も当然必要になります。
英語を集中して聞くと、ほんの数分の会話なのに、ドッと疲れてしまいますよね。母語と英語の言語間距離が近ければ、そんな苦労もあまりないかもしれませんが、日本人の私たちでは一苦労です。

音声面での違い

語順の違いも大きな影響がありますが、個人的にはこの音声面での違いが非常に高いハードルだと思います。
日本語は母音が「ア・イ・ウ・エ・オ」の5つですが、基本的に一つ一つの音に母音が入っています。例えば、「車」であれば、KU・RU・MAとなり、すべての音に母音が入っていますよね。なので、発音するときには、一つ一つの音をはっきり言う傾向があります。

それに対して英語は、子音のみで終わる単語もあります。例えば、” sit “という単語は/ t /という音で終わっています。” sit “を日本語っぽく読んでしまうと、/ sitto(シット)/になってしまいます。この/ to /と/ t /は当然音が違うので、カタカナ英語全開な” シット “にはなりません。
母音があって当たり前の私たちからすると、日本語の影響を受けて日本語的な発音で英語を読んでしまうわけです。
ちなみに初めてrhythm(リズム)という子音しかない単語を見たときは、夜も眠れないほど震えました。(笑)

まとめ

日本人にとって英語は外国語なので、生活で必要性を感じない。
日本語と英語は言語間距離が離れているので、そもそも習得が大変。
日本語と英語では語順も発音のルールも全然違う。

英語は難しいと思っている方、安心してください。
もちろん努力なくして身につくものではありませんが、日本人にとって難しい理由がしっかりあるということです。

海外旅行や留学に行くと、周りはみんな英語をすぐ話せていてすごい!と思うことがあるかもしれません。それをモチベーションにして頑張ることも大切ですし、何より多かれ少なかれ努力は必ずだれでもしています。
しかし、私たち日本人にとっては、より多くの努力が英語学習においては必要になるということですね。

今回の記事では、第二言語習得論のまだまだ入口の話しかしていませんが、こんなふうに言葉を習得する過程やそのメカニズムで明らかになっていることもたくさんあるんです。
日本人に特化して、どんなところで日本人はつまずくのか、その原因なども実は研究されています。そんな学問を対象言語学といいます。

まとめると、

  • 難しくて当たり前
  • 日本人にあった勉強の仕方もある

そんな気持ちをもっていただき、英語学習を楽しもうというマインドをぜひ持ってくださいね。今回の記事ではここまでにしておきましょう!また次回以降で第二言語習得論の内容に一歩踏み込んで、英語を勉強している皆さんにとって有益な情報をドンドン共有していきますよ~。
ではまた次回をお楽しみに!