ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。
「英語学習をやり直したいけど・・・」
「学生時代と比べて物覚えも悪くなってきたし・・・」
こんなお悩み、ありませんか?
今回の記事はこれから英語学習をやり直したいと思っている、あるいはすでにやり直しているけど行き詰っている大人の方に向けて、単語暗記のヒントになるようなポイントを紹介していきます。
暗記と聞いてテンションが上がる人はいないかもしれませんが、英語学習において避けられない道です。それに対して、大人の武器を生かした向き合い方、覚え方の工夫を科学的な観点も交えてお伝えします。
目次
大前提:人間は忘れる生き物である
いきなり哲学的な話ですが、人間が忘れる生き物です。
もちろん英単語に限らず、日本語の言葉や楽しかった思い出も、なかなか思い出せないことってありますよね。忘れることをしなければ、脳のキャパシティが溢れてしまうからです。
周知の事実かもしれませんが、改めてこれを単語暗記に当てはめて考えてみましょう。
毎日単語の勉強をしているけど、なかなか覚えられず、結局次の日にはすべて忘れてしまっています・・・。
1回単語を見ただけで、すべてを覚えることは残念ながらできません。対策をしなければ、一定の時間が経つごとに忘れていってしまいます。
エビングハウスの忘却曲線が表すもの
暗記の話になると、3000%の確率で忘却曲線というものが例にでます。
エビングハウスという心理学者による研究で、下のようなグラフを見たことがある方も多いと思います。
少し誤解されている内容もあるので、ちょっと内容を補足しながら、効率の良い暗記のための前提条件として確認しましょう。
エビングハウスの忘却曲線・・・時間変化に伴う記憶の変化を研究したもの。
グラフの横軸は、最初の暗記からどれくらい時間が経過したか、縦軸はその際の暗記作業に再び取り組んだ場合の節約率を表す。
節約率・・・ある一定時間が経った後、覚え直すのにかかった時間が短ければ、それだけ1回目のときより覚える労力(時間)が節約できたということになる。つまり、節約率は高ければ高いほど、覚え直すのにかかった労力は少なく、コスパよく覚えられたということである。
暗記の鉄則:反復でコスパの良い学習を
記憶のメカニズムに関しては他にも様々な研究がされていますが、結論はとてもシンプルなものです。
それは、暗記してから時間が経てば経つほど、暗記し直すのに時間がかかってしまうということです。節約率で見ると、非常にコスパが悪いですよね。なので、単語暗記の鉄則は、単語に触れ、思い出す頻度を増やすことにあります。
エビングハウスの実験のデータとは前提条件がいろいろ異なりますので、この結果をまるっとそのまま参考にはできません。ですが、今までサポートしてきた500人を超える英語学習者の方のデータも踏まえると、以下のような計画を立てるといいと思います。
- 1回目の暗記(15分から20分程度)※集中力が持つ時間を区切りとする
- 2回目の暗記(1回目の暗記から30分から1時間経過したあと)
- 3回目の暗記(2回目の暗記から2~3時間経過したと)
- 4回目の暗記(1日の終わりの寝る前など)
- 5回目の暗記(翌日)
基本的に暗記は作業として、隙間の時間に確認する程度で大丈夫です。
がっつり1時間集中するよりも、細かく単語に触れる反復の時間を増やしましょう。
キーワードは反復することです。
そして、取り組むタイミングは「あれ、なんだったっけ?」となりつつあるタイミングです。この思い出す作業(想起)が暗記を確実なものにしてくれるのです。
ポイント② 大人の武器で暗記をスムーズに!
アンキパンは残念ながらありませんが、先ほど紹介した反復に加えて、暗記を効率化させるための工夫はあります。それは、自分と関連する意味を持たせる有意味学習と呼ばれるものです。
ちなみに補足ですが、エビングハウスの忘却曲線の実験では、意味がない音節の暗記(機械的学習)をしていました。
暗記する単語には、当然意味がありますし、その単語に対して、自分に関連する意味付けをすることもできます。そこで、今日からすぐに実践できる工夫を紹介します。
工夫① 視覚的情報を使う
イメージがあると、暗記するうえで記憶の手がかりとすることができます。
しかし、一つ一つ単語を画像検索で調べていくと、途方もない時間がかかってしまいます。そこで、ぜひアプリを使いましょう。
以前も紹介したことがありますが、Quizletというアプリでは単語暗記の際に画像も自動で登録できます。ときどき変な画像も出てきますが、それはそれでまた一つにインパクトになり、覚えやすくなりますよ。(笑)
工夫② 音声を使う
音声を聞くことで音が頭の中に残るため、暗記につながるきっかけの一つとなります。
基本的にすべての単語帳には音源がついているので、ぜひ活用しましょう。
例えばTOEIC対策でお馴染みの『キクタン』シリーズでは、音源は英語⇒日本語⇒英語で発音されます。リズム感も相まって、暗記につながる要素となり、ただ眺めるだけよりも効率よく暗記ができるので、TOEIC学習者には超絶おススメな教材です。
私もTOEICの勉強をしていたときに、600点レベルから990点レベルまで使っていたので、音声の軽快なリズムとナレーターの女性の方の声は今でも覚えています(笑)。
工夫③ 単語の語源を理解する
始めてのデートや楽しかった思い出など、印象に残れば残るほど、強く記憶に残りますよね。
単語暗記でも、ただの暗記ではなく、語源から理解することで、より強く印象に残せるかもしれません。特に、TOEICにおいては、語源の理解が非常に効果的です。
- respect(re; 振り返って、spect; 見る)⇒二度見するくらいスゴイので、尊敬する
- inspect(in; 中を、spect; 見る)⇒中を覗き見るように、調査する
- expect(ex; 外を、spect; 見る)⇒遠くにある何かに思いを寄せて、期待する
シンプルな例ですが、単語によってはこのように分解して考えられるものもたくさんあります。ググると語源の説明は無限に出てきますが、要は自分が納得できる感覚があればそれでOKです。
ちなみにre-やin-のように単語の頭についているものは接頭辞といいます。
日本語の漢字で言えば、部首みたいなものです。これ自体に意味があるので、単語全体の意味を想像するうえで、大きなヒントになります。
また、単語の終わりの形(接尾辞)も役に立ちます。
例えば、informとinformationを見てみましょう。-ionは名詞を表すサインです。他にもsuggestionやconclusionなども同じ形なので、名詞だとわかります。
このように品詞は違うけど、元が同じ単語を派生語といいますが、派生語はまとめて覚えるとより効率的です。
例えば、informの派生語が他にも、informativeやinformantなどがあります。
informから想像して、これらもなんとなく意味が想像できませんか?ここで意味の確認はあえてしませんので、気になったらぜひ自分で調べてみてください。必ず「なるほど!」と思えるはずです。
工夫④ 日本語との関連性で覚える
「次のミーティングでは、サステナブルなソリューションをアジェンダに加えましょう。」
カタカナ英語は間違っているものもたくさんありますが、ヒントになるときもあります。
例えばビジネス場面では、アジェンダ(agenda)やエビデンス(evidence)、他にもコロナの影響でクラスター(cluster)やソーシャルディスタンス(social distancing)などもあります。
これらは、発音やアクセントに違いはあれど、0⇒1で覚える必要はなく、すでに知っている単語なので、覚え直すだけですよね。それだけで単語暗記の負担は減ります。
ちなみに、他にもビジネス場面で使われるカタカナ英語はたくさんあります。
- アライアンス(alliance; 同盟、提携)
- コミット(commitment; 約束、保証)
- コンプライアンス(compliance; 法令順守)
- リスケ(reschedule; 再調整)
- ソリューション(solution; 解決)
カタカナ英語はかっこいい響きはありますが、使い方を間違えると恥ずかしいので、注意してくださいね!
まとめ
単語暗記に関して、記憶のメカニズムや暗記の工夫は参考になったでしょうか。
大人だからこそできる工夫でもありますね。
「どうすれば単語を効率よく覚えられますか?」
こんな質問を、英語を勉強している方に通算800回くらいされたことがあるので、記事にしてみました。本記事でお伝えしたような内容は間違いなく暗記を加速させるものですし、大人だからこそ持てる視点なので、ぜひ活用してほしいです。
その一方で、ある程度時間をかけ、工夫を重ねながらも愚直に反復していくこともやはり必要です。単語暗記はちょっとの工夫と大部分の努力だけ、というなんだか根性論みたいな話も結局しています。それでも、少しでも皆さんの単語暗記の手助けになれば幸いです。
ちなみに、こちらの記事でも、大人にしかできない英語学習の対策を紹介しています。
ぜひ参考にしてみてください!
アイキャッチ画像の出典:https://www.tv-asahi.co.jp/doraemon/story/0426/