- 海外への進学を考えている社会人の方
- 家族や仕事を諦めずに大学院で勉強したい方
- できる限り費用を抑えて進学したい方
- 今後のキャリアのために、スキルを身につけたい方
ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。
留学をして、スキルアップや今後のキャリアに生かしたい。
そんなことを考える社会人の方も増えてきましたね。
ですが、現在の仕事や家庭のことなど、社会人の方にとって海外への進学は非常にハードルが高いものでもあります。
ですが、今の時代だからこそ、新しい学び方があります。
私は、イギリスのLancaster大学院でTESOL(英語教授法)をDistance Learning(通信教育)で修了しました。この記事では、海外への進学を考える方に、私の経験を包み隠さずお伝えしたいと思います。
MBAなどの人気の専攻も視野に入れて海外への進学を検討している方にとっても、Distance Learningがどういったものかイメージしていただけるはずです。
ちなみに海外への進学に必須なTOEFLとIELTSの比較はこちらにまとめています。
どちらの試験を勉強するか迷ったときに役に立つ内容ですので、よければ参考にしてくださいね。
目次
Distance Learningとは?
Distance Learningとは、いわゆる通信教育のことです。
ですが、通信教育と一言でいっても形態がいろいろありますし、中には実際に現地への短期滞在(スクーリング)が必要な大学院もあります。また、現地の授業にリアルタイムで参加するLiveレッスンの形態もあります。
私が修了したLancasterに関して言えば、大学院の授業は基本的にリアルタイムのLiveレッスンはなく、動画やテキストベースのコミュニケーションが中心でした。
ちなみにDistance Learningで学ぶ学生は、基本的に現職に就いているので、LancasterのTESOLも、本来1年かけて修了する修士課程を、2年かけてPart-timeで受講するカリキュラムでした。
同級生も世界中のいろいろな所に住んでおり、国籍も様々でした。
入学時に15名程度学生がいましたが、イギリス、アメリカ、オーストラリアに加え、中国、それから日本人の方も1名いました。
Distance Learningの大学院生活
Distance Learningで学ぶ大学院生活を、もう少し詳しくお伝えします。
仕事と勉強を両立させて、二足のわらじを履く生活のリアルです。
コミュニケーション方法
コミュニケーションはMoodleというプラットフォームを使っていました。
学期(モジュール)ごとに掲示板があり、その中でチャット、あるいはメールベースでやりとりをすることになります。
時差の関係もあり、TeamsやZoomを使ってのリアルタイムの会話は一度もなかったと記憶しています。ですが、グループワークで取り組む課題が毎回あったため、時差がなければオンラインでリアルタイムに話しながら取り組んでいるグループもあったようです。
ちなみに修士論文に関して、スーパーバイザーの教授とはSkypeで直接話したことが一度ありました。ですが、やはり基本的にはテキストベースで進めていました。テキストでもらうフィードバックは、なかなかグサッとくるものがありましたね・・・。
【Part-time受講】課題の量
課題はどれくらい出るの?
おそらくすべての方が気になることですよね。Distance Learningに関する情報はあまりないので、ぜひ参考にしてください。改めて前提ですが、私はPart-time受講なので、現地での留学と比べると1週間あたりの量は少ないです。もちろん修了までにかかる期間がその分長いですが。
毎週の課題は、A4で20ページくらいある論文を2本から3本くらい読み、週末に掲示板のディスカッションボードにポイントやアイデアを書き込むという流れでした。
Part-timeでの受講とは言え、私にとっては余裕などありませんでしたので、毎週ヒーヒー言っていましたね。(笑)
また、各モジュールは10週くらいで完結しますが、モジュールの単位取得のためには5000 wordsのレポートの提出が必要でした。参考文献なども入れると、結局A4で15枚くらいになる量なので、ぶっちゃけかなり大変でした。ちなみに各レポートの作成期間は1か月程度です。
卒業までの超えるべきハードル
ここでは、Lancasterを修了するまでの2年間で乗り越えたいくつもの壁をお伝えします。不思議と当時は結構楽しんでいましたが。(笑)
ちなみにLancasterは修士論文が必須ですが、大学院によっては修士論文ではなく、プロジェクトなどが要件になっているところもあります。
仕事と勉強の確実な両立
Distance Learningの一番のハードルは、学習習慣を今の生活で確立できるか。間違いなくこれですね。
というのも、Distance Learningは日々の取り組みに対して自由度が高く、課題を自分の生活に落とし込み、とにかく自分で進めていくしかないからです。
学習習慣が身についていないと、仕事や家庭との両立もできず、結果的に課題がこなせません。また、課題を出さなくても基本的にだれも何も言いませんので、自分次第です。
当然その場合はFailureになってしまうわけですが・・・。
Lancasterの場合は、毎週の課題に対してのテキストベースでのディスカッションはペアやグループになっていることがほとんどでした。なので、同級生と交流する機会も少なからずあります。
ですが、結局は自分次第の要素が9割以上を占めています。
そして衝撃の事実を1つお伝えします。
入学当初、15名くらいの同級生がいましたが、卒業できたのは半分程度でした・・・。
毎回のモジュールで、ドロップアウト者の共有が教授からありました。
いろいろな事情がもちろんあると思いますが、大学院は入ってからが本当にスタートです。
課題レポート5本
こちらは先ほどお伝えした通りです。
LancasterのTESOLでは、修了までに全6モジュールあり、そのうちの最後のモジュールは修士論文でした。なので、結果として5000wordsの期末レポートを5回提出したことになります。
レポートに取り組んでいた期間は、基本的に休日という概念はなくなりますので、毎日プレッシャーを感じながら過ごしていました。(笑)
ちなみに大学院によっては、レポートではなく試験になることもあるはずです。
モチベーションの維持
学習習慣と重なる部分が大きいですが、モチベーションの維持を自分でしなければなりません。Lancasterでは、コースが始まる前にオリエンテーションの期間が1週間あるのですが、その際に、こんなトピックに対してディスカッションをしました。
- Distance Learningをやりきれる人の特徴
- Distance Learningにおいて、自分のハードルになることとその対策
ドロップアウトする学生がいることが前提なんですよね。先述した通り、実際に何人もドロップアウトしていましたし。
結局、大学院での学びを経て、どうしたいのか。
その後のキャリアにどう生かしていくのか。
こんなしっかりとした将来のイメージを持っていなければ、おそらく2年以上も勉強を続けるモチベーションの維持は不可能です。今のライフスタイルを維持して学位が取れるというメリットがある一方で、生半可な気持ちではまず続けられないものです。
修士論文
当然ながら一番のハードルです。今思い出しても、本当に苦しかったです・・・。
修士論文は大学の学部で書く卒業論文ほど易しくはないので、12000単語から15000単語を書く必要があります。参考文献や、自分が集めたデータなどの補足資料も入れると、A4で60枚から80枚くらいになることが多いと思います。
私も80枚は超えていましたし、データの分析(統計のソフトを使用)をする必要があり、やったことがない内容で毎日頭を悩ませ、苦しみ続けて書き上げたことを今でも覚えています。
また、当時はベトナムに住んでいましたので、日本に住む教師の友人に片っ端から連絡をして、量的調査(アンケート)と質的調査(インタビュー)をしました。
謝礼やら英語の添削やらで、けっこうお金も吹っ飛んでいきました。
アウトラインやサンプルデータの考察に関しても、スーパーバイザーから蒙古タンメン中本レベルの激辛コメントをもらい、人生辞めたくなるレベルでした。(割とリアルに)
Distance Learningの本音
ここまでいろいろとお伝えしてきましたが、Distance Learningで犠牲にしたものを本音とともにまとめたいと思います。
学費(約180万)
これは必要経費ですね。もちろん、現地で留学した場合もコストがかかりますが、Lancaster
の場合は、Part-timeのDistance Learningと、Full-timeの現地での留学で学費は同じです。
ただし、Distance Learningでは滞在費やビザのお金なども必要ありませんので、純粋に金額だけ見たらかなりお得感はあります。
私の場合、本当はカナダの名門大学院であるUBCに行きたかったのですが、給付型の奨学金の申請条件を満たしていなかったことがDistance Learningを選ぶことになった主な理由です。
もし仮に現地の大学院で学んでいたのであれば、学費と滞在費で500万円はトータルで必要になっていたはずです。円安の2022年の今だと、600万くらい必要です。
ちなみに米国MBAを私費で学ぶと学費だけで1000万は余裕で超えますので、トータル2000万くらい必要になります。ですが、Distance Learningで学ぶMBAは3年程度で卒業でき、学費も400万円くらいだそうです。
自由な時間
Lancasterで学んでいた2年間は、遊びに行く時間は本当になかったです。旅行したかった・・・。
仕事と両立させながら、毎回の課題をこなすのに精いっぱいでした。
当時の私はIELTSで7.0をとっており、TOEFLでいうと100点相当のスコアです。
それでも自分の専門分野である英語教育の内容ですら、1回で論文が理解できることはありませんでしたので、論文は複数回読む必要がありました。
毎朝4:45に起きて出社前に勉強していましたし、終わらない場合は仕事後に取り組むことも。
週末ももちろん課題をまとめるのに時間を使っていました。
当時はベトナムに滞在していたのですが、ベトナムのテト休暇(旧暦のお正月)で日本に一時帰国していたときや、バンコクでムエタイ合宿に参加していたときでさえも、合間に大学院の課題に取り組んでいました。(笑)
唯一1年目が終わり、2年目のModuleが始まる前は、課題が終わっていた場合のみ1か月くらい休みがあったような気がしますが、そんな程度です。
出会いのチャンス
現地で過ごす時間が留学の一番の醍醐味だと思いますし、留学先での出会いで人生が変わることもあります。Distance Learningの一番のデメリットは、この出会いが限りなく薄くなることだと思います。
同級生と一緒に勉強したり、課題が終わったあとは飲みに行ったり、旅行したりと楽しい時間もたくさんあるはずです。
しかし、Distance Learningでは当然そんなことはありませんので、純粋に孤独との戦いです。そして、その戦いから毎回のモジュールでドロップアウトする方が出てくるわけです。
当時はDistance Learningで学ぶことが、私にとっての最適解だったので一切悔いはありません。ですが、同じ志を持った友人との出会いは欲しかったと今でも思います。
海外進学を検討している方へ
ここまで、Distance Learningの経験や私の本音をお伝えしてきました。
皆さんにとって少しでもイメージが湧く内容になってるでしょうか。
最後に、海外進学を目指す社会人の方に向けて、メッセージです。
大学院進学の目的と手段を考える
金銭的な理由からDistance Learningを選んだのは事実です。
ですが同時に、すでに教師としての経験も豊富にある30目前(当時28)の自分が、全ての今の生活と収入を捨てて大学院生になることにどこまで価値があるか。そんなことを真剣に考えました。
そして、私にとって大学院進学は、今後のキャリアを考えたときの手段であり、進学すること自体が目的ではないという結論にいたりました。
カッコつけてこんなことを言いながらも、自分もお金があったら現地で勉強したかったです。
もっと英語も上手になったかな、なんてふと思ってしまいます。
私自身で選択したDistance Learningが、カナダへの留学を考えていた当初の自分からは想像できず、環境なども多くの不満がありました。人との出会いはもちろん、英語力的にもリーディングとライティング以外は基本身につかないと思いますし。
でも、仮にその環境が30点だとしても、その環境を選んだ自分は120点の生活をしようと決めていました。そのおかげで、朝活をずっと続け、何度も苦しみながらも学びを楽しむことができました。
修士論文のプロジェクトは一生忘れられない体験です。成果は非常にお粗末なものでしたが。(笑)
海外進学の目的と手段、ぜひ改めて考えてみてください。
選択し、行動あるのみ
Distance Learningにせよ、現地での留学にせよ、環境に不満は必ず出ます。そして、思い通りにいかないことばかりです。
それに、大学院を出たからといって、望む未来が手に入るとも限りません。
どんな形であれ、大学院に進学すれば、いろいろなものを犠牲にしますし、諦めないといけないこともあるでしょう。挫折もするし、いろいろと劣等感を感じることもあります。
それでも、今のライフステージにあわせた学びの選択肢がDistance Learningです。
どの選択をとっても、それが正解かどうかは誰にもわかりません。結局のところ、それが正しかったと思えるように行動あるのみです。
最後は暑苦しく語りましたが、海外進学を目指す方にとって、一つの選択肢としてDistance Learningがあることを伝えたくてこの記事を書きました。
少しでも参考になることを願っています。それではまた次回!