ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。
コロナの影響により、オンラインで世界中とつながることが改めて当たり前になったこの時代。急に海外チームや海外顧客と接点を持つことになり、英語の必要性を感じている方も多くなりました。
とりあえずTOEICでもやってみる、という選択も間違ってはいないと思いますが、ちょっとお待ちください。
大人の皆さんが英語学習をやり直すうえで、リスニングをどうやって正しく勉強すればいいのか。この記事では、そんなことをしっかりお伝えします。
ちなみに単語学習編もありますので、まだの方はぜひご覧になってくださいね。
目次
大前提:実践場面ではリスニングが最重要!
リスニング練習なしに、会話練習はできません。
当たり前かもしれませんが、あえて強調しておきます。なぜリスニングがとにかく大切なのか。
そもそも会議などで発言する場面を考えてみてください。
発言するということは、何かのメッセージを伝えるということ。その場で話されているトピックがそもそもわからなければ、メッセージを伝えることができません。
一方的に自分が言いたいことを伝えてあとは知らん!という何とも傍若無人な人になってしまいます。(笑)
英会話ができるようになるためには、まずはリスニングの練習が必須です。
内容が聞き取れるようになること。聞き取ることができれば、単語やジェスチャーを駆使して伝えられることもあるかもしれません。
話すよりもまずはしっかり聞けること。そういうことです。
リスニングの大原則:音と意味と文字の関係
英語学習にはいろいろなやり方があり、巷には様々な英語学習方法が溢れています。
ですが、大前提として、文字で見てわからないものを何度聞いても、意味を理解することはできません。
そんなリスニングの原理原則をお伝えします。
洋楽の歌詞は理解できる?
皆さんは洋楽を聞いたときに、歌詞の意味を理解しようとしているでしょうか。
日本語だと当然ながら自然と理解できますが、おそらく洋楽の場合は違います。
その洋楽が好きな理由は、メロディーや声質、リズムなどの歌詞以外の部分を好きになっているはずです。
歌詞の意味を理解して聞いている方はあまりいないのではないでしょうか。
(もしいたらスミマセン・・・)
単語を単語として認識できなければ、意味をとらえることができない。すなわち、ただのBGMとして聞き流してしまうことは、皆さんも納得できる現象ではないでしょうか。
こんな現象を『音声知覚』と『意味理解』という言葉を使って以前紹介したことがあります。
詳しく知りたい方は、ぜひこちらも参考に。
おススメできない練習方法
知識として単語や文法などを理解していなければ、リスニングで聞くことはできません。
闇雲に聞きまくるのではなく、聞く題材のレベルを考える必要があるということです。
これから英語学習をやり直そうという方が、TOEICの勉強を始めても、わからないことばかりで挫折してしまいます。なぜなら、TOEICは全レベルの受験者が、同じ1つの試験を受けるからです。それぞれの英語力に合わせて、問題は設計されていません。
また、PodcastやTED、洋画や海外ドラマを使って英語に触れることから始めようと思う方もいるかもしれません。
それが決してムダになることはないと思いますが、少なくともリスニングの力をつけるという点においては効果は薄いでしょう。
なぜなら、そういったリアルな題材は話すスピードも速く、私たちが学校で習った英語表現とはレベル感が違いすぎるからです。生の英語の題材としてはすばらしいものですが、映像や雰囲気でわかった気になって終わってしまう可能性が高いです。
最初のステップは現在地の把握!英検の活用
今の皆さんのリスニング力を測る絶好の題材があります。しかも、完全に無料で使えてしまうものです。
「そんなものがあるなら、早く教えてくれ!」
そんな心の声も聞こえていますのでお伝えすると、ズバリ英検のリスニングを題材として使うことです。
英検を子どもが受ける試験だと思っていませんか?
確かに受験者は子どもの層が多いので、あながち間違ってはいません。
ですが、英検の良いところは級ごとに、つまりレベルごとに問題が分かれているというところです。
今の自分のリスニング力を正確に把握することを、リスニング練習の出発点としましょう。
しかも、英検は過去問が無料で公開されていることをご存知でしょうか?
さらにさらに、音源やスクリプト(リスニングの台本)も無料で全レベル見れてしまうのです。
英検を使ったリスニング学習のTo do
具体的に英検を使ってどのようにリスニング練習をしていくのか。そんな方法をお伝えします。
STEP1. 自分のレベルに近そうな級の音源を聞いてみる
まずは過去問のサイトで、自分のレベルはこれくらいかな~と思う級のリスニングを聞いてみましょう。
ちなみに問題を解く必要はありません。
もちろん解くことが悪いことでは決してありませんが、問題を解こうとすると、答えを探すために聞くことになります。
結果的に、内容を理解するというリスニングの本質のための勉強ができない可能性があります。
以下のレベルを参考に、まずは自分で級を選んでリスニングの音源を聞いてみましょう。
ちなみに、級にもよりますが、第一部は短めの応答なので、題材としては第二部の問題をやってみると、ちょうどレベルがわかると思います。
- 5級・・・中学1年生レベル(be動詞、一般動詞、)
- 4級・・・中学2年生レベル(過去形、現在進行形、過去進行形など)
- 3級・・・中学2年~3年生レベル(不定詞、動名詞など)
- 準2級・・・中学3年生~高校1年生レベル(間接疑問文、現在完了など)
- 2級・・・高校卒業レベル(仮定法、関係代名詞、間接疑問文など全範囲)
STEP2. 自分の適正レベルを判断する
聞いてみたリスニングの感触をもとに、自分の適正レベルを判断します。
その際の基準は、7割から8割くらいわかる!というレベルをまずは探しましょう。
それくらいのレベルであれば、ストレスなく着実にステップアップしていくのにちょうどいい題材だからです。
準2級を聞いてみて、スピード感や英語の音についていけないのであれば、3級に戻る。
ストレスなく意味もわかるのであれば2級の内容を聞いてみる。そんなふうにして、自分の現在地をしっかり把握しましょう。
STEP3. 読んでわかる⇒聞いてわかるを目指す
自分の適正レベルがわかったら、理解できていない2割から3割くらいの内容をつぶしていきます。『なんとなくの理解』から、『正確な理解』を目指します。
まずはスクリプトを見ながら、もう一度聞いてみましょう。
そして、わからないところを以下の2つにカテゴリー分けしてみてください。
- 文字で見てもわからないもの(=知らない単語や理解できていない文法など)
- 文字で見たらわかるけど、音声で聞くとわからないもの(音声面の伸びしろ)
❶文字で見てもわからないものは、おそらく単語などの知識に原因があるというケースが大半です。それらはみなさんにとって覚えるべきインプットですから、ときには調べたりしながらしっかり覚えましょう。
また、❷の音声面での伸びしろに関しては、音声変化がおそらくポイントになります。
日本語もそうですが、英語も文字と音声は一致しないことがたくさんあります。発音しやすいように変化するからですね。
複雑に見える音声変化も、元をたどれば5種類しかありません。
こちらを参考に、まずはそのルールを理解しましょう。そして、その音声変化に意識を向けて、自分でも声に出して、恥ずかしがらずに全力でマネをしてみましょう。
音源と全く同じにはなりませんが、そこに意識を向けて練習することで、自然と音声変化が定着していきます。
STEP4. 違和感なく聞けるようになるまで反復
この時点で、文字と音声がしっかり一致して聞ける状態になっているはずです。
あとは、同じ音源を何度も繰り返し、聞いたときの違和感をなくすことです。
ですが、練習を重ねていくと、こんな事態に陥ります。
「アレ?今なんて言ったの?」
「途中でついていけなくなってしまった・・・。」
こんなときは必ず原因があります。
- 単語や文法がしっかり理解できておらず、『なんとなく』で理解した気になっていないか。
- 音声変化がわかっておらず、雰囲気で聞こえた気になっていないか。
- スピードの処理が追い付かず、音源においてかれていないか。
原因を特定し、ときにはスマホのアプリなどでスロー再生もしてみて、違和感をつぶすこと。
そのためには原因分析⇒改善⇒もう一度リスニングという一連の作業を反復していくのみです。
ただし、毎日ずっと同じ題材を聞き続けると飽きてしまいます。
そこで、同じ級の他の題材でバリエーションをもたせたり、シャドーイングなど練習方法にも変化を持たせると、マンネリ化せずに続けられます。
まずは英検2級までをゴールとする
延々と英検でリスニングの練習を続けていても、終わりが見えないとモチベーションも下がってしまいますよね。
ひとまず目指すゴール感としては、2級まででOKです。
2級のリスニングの題材を使った練習が終わったのであれば、あとはTOEICにもチャレンジできると思いますし、実際に英会話の練習もどんどん進めていけるレベルになります。
何より、仕事の中でもリスニングで必ず変化を感じているはずです。
まとめ
これから英語学習をやり直す大人の皆さん、リスニングから始める必要性を感じていただけましたか?
学習には適切なステップがあります。
例えばこれから筋トレを始める方が、いきなり120kgのベンチプレスに毎日挑戦したところで、おそらく持ち上げることはできませんよね。
まずは自分が持ち上げることができるレベルを知ること。そこから、5kg、10kgと徐々に負荷を増やして強くなっていくものです。
これがいわゆる効率的な学習だと思います。
英語学習をやり直すからには、学習の最短距離を一緒に進みましょう。