TOEFLスコアメイクのためにTOEFL対策をしない勇気を持て

この記事はこんな方にオススメ!
  • 数年後の留学に向けて、TOEFL対策を始めようと思っている方
  • 現状のスコアが50点以下の方
  • TOEFL対策で挫折した経験がある方
  • 現在の英語力に自信がない方

ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。

今回のテーマはTOEFLです。
TOEFLと言えば、IELTSに並ぶ留学のための試験です。留学の切符を掴むために、多くの受験生が苦労して乗り越える必要がある、非常に難易度の高い英語の試験です。

今回はそんなTOEFLの対策として、あえてTOEFL対策をしない勇気を持って欲しいという、なんとも哲学的な内容で記事を書いています。決して冗談ではなく、TOEFLのスコアを取得するために、TOEFLの対策をしないほうが良い受験生の方もいるからです。

TOEFLに悩む学習者の皆様、ぜひこの記事を最後まで読んで、スコア獲得につながるヒントにしてください。

TOEFLの形式のおさらい

まずは、TOEFLの全体像を理解して、対策の方向性を考えましょう。

TOEFLは英語としての難易度に加えて、その試験時間の長さも取り組む上でのネックでした。
ところが、2023年の7月にWritingの一部の問題形式の変更と、問題数の削減により、だいぶコンパクトな英語の試験に生まれ変わりました。

2023年からの新形式の特徴

新形式と旧形式の違いを簡単に図にまとめました。


以前はReading、もしくはListeningで採点に影響されないダミー問題が出題されていたため、テスト時間も長く、休憩時間に食べる用のチョコレートを持参して試験会場に向かっていました。

ところが今回の形式変更に伴い、全体の試験時間もTOEICと同じ2時間になり、休憩なしのぶっ通しの試験になりました。

また、Writingは以前はエッセイ形式で300単語以上書く必要のある設問も、コンセプトは基本的に同じであるものの、100単語でOKという新しい設問に変わりました。旧形式のエッセイでは、アイデア出しで苦労されている方が多かったので、今回の変更で楽になったと感じる方もいるかもしれません。

4技能まんべんなく勉強してはいけない

TOEFLの特徴でもあるIntegrated Taskという形式を理解しておくと、学習計画で迷いがなくなります。

Integrated Taskとは、SpeakingとWritingで出題される設問形式です。
ある文章を読み、それに関連する会話や講義を聞き、それらの情報をまとめて書く/話すという、要約的な設問です。

Speakingにいたっては、4つある設問のうち、3つがこのIntegrated Taskです。
また、Writingでも2つある設問のうち、1つがIntegrated Taskです。なので、SpeakingとWritingセクションでスコアを取ろうと思っても、結局のところReadingとListeningのスキルがなければ、そもそも回答できない形式です。

なので、SpeakingとWritingの対策に関しては、ひとまずReadingとListeningである程度の力がついてからでないと、そもそも対策が難しくなります。

さらに詳細が気になる方は、他の記事で回答のポイントやサンプルアンサー、それから学習方法などを解説しています。ぜひ今後の参考に覗いてみてください。

英検/TOEICのレベル別TOEFLスコア

ここでは、TOEFLのスコアにあわせた実際の英語力を見ていきましょう。
TOEICをはじめとする英語の資格試験との比較も、ちょっと古いデータではありますが、文科省が作成しています。

実際のところ、TOEFLはほかの資格試験との比較はかなり難しく、参考程度にしたほうがよさそうです。
ちなみにTOEFLのスコア換算は更新され、現在はCEFRのC2レベルにも該当するようですが、今回の記事の対象ではないため、省略しています。

TOEIC600点以下、英検準2級レベル

これくらいのレベルの方がTOEFLを受験すると、仮に対策をしたとしても、おそらく40点くらい、もしくはそれ以下になります。対策といっても、ほぼ理解できないレベルであるため、日本語の説明がないTOEFLの公式問題集では勉強が進められません。

また、おそらく4技能におけるセクションごとのスコアの差はなく、4セクションで10点前後になるでしょう。

基本的にReadingとListeningは勘で答える問題がほとんどで、勘が当たれば予想よりもスコアが高くでる可能性はあります。また、SpeakingとWritingでも10点くらいとれるのは、機械添削の採点形式上、仮に的外れでも何か言う/書くことができていれば、10点くらいの点数はとれるからです。

TOEIC600点台、英検2級レベル

これくらいのレベルでも、おそらく先述した1つ下のレベル感とほぼ同じ感覚で試験を受けることになります。同様に、TOEFLの公式問題集を使っての学習はレベル的に難しいです。

TOEFLのスコアでは、40点台におさまるレベルです。
一部、Readingの語彙問題などは自信を持って正解できる問題もあるかもしれません。それでも、基本的に理解して答えることができる問題は、4技能において極端に少ないはずです。

TOEIC700点台、英検準1級レベル

これくらいのレベルになると、自分で調べたりしながら、TOEFLの公式教材もなんとか使えるようになってきます。それでも、ReadingはTOEICの3倍から4倍くらいの文量ですし、Listeningは英検の5倍くらいの長さです。また、Listeningでは先に設問を読み、聞く準備をすることがTOEFLではできません。設問形式の戸惑いもあり、学習にはかなり体力が必要です。

TOEFLのスコアでは、個人差はあると思いますが、50〜60点くらいの方が多いと思います。
Readingでは語彙問題や一部の内容正誤問題、それからListeningでは会話の問題であればある程度正解できる問題もあります。また、SpeakingとWritingも、問題によっては聞き取ったキーワードから想像して、内容がつかめるものもあります。

TOEFLではなく、まずは英検から!

TOEFLのスコアメイクのために、TOEFL対策を始めようと思っている方には、ぜひ当面の目標として、英検準1級を目指して欲しいと思います。

TOEICで800点をひとつの基準としても良いのですが、TOEICは問題の内容としても日常生活からビジネス場面を中心にしています。また、英語として理解する力も必要ですが、情報処理能力がより求められる試験です。

ここでは、TOEFLを始める前に、まずは英検を最初のステップにして欲しい理由をまとめます。

TOEICにはない英検の魅力

英検で扱うトピックは、日常的な内容からアカデミックな内容です。
例えば、2023年度の過去問では、以下のようなトピックが長文読解では出題されていました。

  • 環境学者と経済学者の話
  • Meritocracy: 能力主義
  • アリの習性
  • アメリカで大学が発展した歴史的背景

これらは、文量としては長くても500単語程度なので、TOEFLの800単語程度のReadingと比べると、文量的にも内容の難易度的にも大きな差があるのは事実です。ですが、トピックとしてはかなり親和性が高く、読んで正確に内容を理解するという点に関してはTOEFLへの橋渡しになります。

Listeningに関してはスピード感はゆっくりではありますが、聞きながら情報整理をし、その後設問を聞いて答える問題形式は、TOEFLに通ずる部分があります。また、TOEICのようにキーワードを拾って回答する形式ではないため、内容理解ができたから回答できる、というTOEFLにおけるゴール感にも通じます。

TOEFL対策をするデメリット

少なくとも、英検準1級のReadingとListeningで、合格レベルまで理解できない状態でTOEFLを学習したとしても、英語力そのものはなかなか上がりません。

TOEFL対策として、TOEFL3800で単語を覚えたとしても、そもそもの基礎単語で知らない単語も多いはずです。その状態で一つ一つ調べながらReadingやListeningの内容を進めたとしても、わからないことが多すぎて心が折れてしまうこともあります。そんな方をこれまで何人も見てきました。

現状の英語力と、取り組む問題で求められる英語力のGapが大きすぎる場合、学習の負担の大きさもそうですが、精神的にも苦しくなります。筋トレと同じで、現状50kgしかベンチプレスを上げられない状態で、目標の100kgに毎日挑んでも、おそらく目に見える進歩はほとんどないですよね。

大切なのは、レベルに合った教材を進め、そもそもの英語力を上げることで、TOEFLの勉強を始める準備をすることです。英検は過去問が無料で公開されていますので、まずは自分の現在地把握のために、内容を見てみましょう。頑張れば取り組めそうな級から、始めてみてください。

こちらの記事でもTOEFL学習のロードマップを紹介しています。

注意

そもそもの英語力を上げるために、英検準1級をまずは目標にするという話をしましたが、TOEFLのスコア取得期限は必ず確認してください。

例えば、現状のスコアが50点で、大学の交換留学のために60点を来月取る必要があるなら、TOEFLの対策をやるしかありません。さらに言えば、時間と費用面で可能な限り何度も受験をしたほうが良いです。出題されるトピックによっては回答しやすいものもあるかもしれず、当てずっぽうでもスコアが上振れして、目標スコアを取れる可能性があるからです。

まとめ

今回は、TOEFL対策を始めるうえで、まずは英検準1級を通過点としての目標にするという内容でした。

英検準1級がスムーズに理解できる英語力であれば、間違いなく英語力そのものの基礎はしっかりついているレベルです。TOEFL学習を進めながら、スコアメイクのために成長していけます。

TOEFL対策として、TOEFLの題材は使わない勇気をぜひ持ってください。
急がば回れですね。スコア取得、頑張ってください。