TOEICって英会話に役に立つの?使える英語と使えない英語を考える記事

この記事はこんな方におススメ!
  • TOEICを勉強しているけど、英語が話せないと不安な方
  • とにかく英語が話せるようになりたい方
  • 英会話を上達させるためのステップを理解したい方

ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。
この記事では、大学生や社会人にとって知らない人はいないであろうTOEIC L&R(以下、TOEIC)に関して、英会話との関係をお伝えしていこうと思います。TOEICに対する批判は様々な観点からあるかもしれませんが、あくまで英会話との関係という点に絞りお伝えしますね。

「TOEICを勉強しても、結局話せるようにはならないのでは?」

「英会話ができるようになりたいなら、TOEICの勉強はしないほうがいいの?」

こんな疑問、ありませんか?
TOEICのスコアは使えない英語と揶揄されることもありますが、果たしてそれは事実なのか。私の経験や教育者として数百人を見てきた経験、第二言語習得論の観点も交えてお伝えしますね。

TOEICと英会話は英語力を測る別の物差し

まず大前提として、TOEICはListeningとReadingの力を測る試験です。
そこで、TOEICの対策として単語や文法の勉強はするものの、それを実際に会話で使ってみたり、英作文をするというアウトプットの練習はしません。

それに対して英会話ではどうでしょうか。
知識をベースに自分で英語を出す、いわゆるアウトプットをします。そのときに、私たちは伝えたいメッセージをおそらく日本語で思い浮かべ、それを英語で表現するという方法をとります。もちろんレベルが上がれば上がるほど、それは自動的になり、英語を英語のまま考えることになります。ですが、大多数の英語学習者は日本語を通して英語を操るプロセスを経験します。
その際に、日本語⇒英語がスムーズに変換できなければ、当然ながら伝えたいメッセージをなかなか伝えることはできませんよね。ちなみに、大学時代の私も815点を取得しましたが、英語はほとんど話せませんでした。

結論ですが、測りたいものが違うのです。
三角定規では角度が測れないように、長距離走と短距離走の選手を比較できないように、同じ英語でも測りたい英語力の領域が違うのです。なので、TOEICを使えない英語と揶揄すること自体がすでにナンセンスなわけです。

ですが、どちらも英語力をそれぞれの物差しで測っていることは事実です。なので、TOEICのスコアから測れる英語力も正しいし、英会話の力で測れる英語力も正しいわけですね。ただし、英語力というのは、知識面はもちろん、音声面、コミュ力、感情面など様々な要因が絡まってできています。TOEICが測っているのはその中のほんの一部であり、英会話の力も同様にその中の一部に過ぎません。

TOEICの知識は会話に使えるの?

当然ながら、これでこの記事は終わりませんよ。(笑)
TOEICの知識が英会話に役に立たないのかというと、決してそんなことはありません。先ほどお伝えした通り、英会話はアウトプットですので、伝えたいメッセージを瞬時に言葉で出す練習が必要です。それをするにあたって、そもそも知識として単語や文法を知らなければ、話すことなんてできませんよね。

ちょっと考えてみましょう。
子どもは両親の言葉をはじめとする膨大な量のインプットに触れ、かついろいろな意味でピュアに言葉を吸収していくので自然と話せるようになります。しかしながら、日本人のように第二言語として英語を学んでいる大人の私たちは、意識して単語や文法を覚えることなしに自然と習得するというのは、環境的に難しいです。つまり、知識は身につけようとしない限り身につかない。

ここで、私たちの頭の中にある知識について少し第二言語習得論の観点も交えて確認しましょう。知識(いわゆるインプットして覚えたもの)は長期記憶という入れ物に入っており、それらはざっくりと顕在(けんざい)記憶潜在記憶の2つの種類にわけることができます。

顕在記憶(Explicit Memory)

宣言的記憶(Declarative Knowledge)とも呼ばれますが、旅行の思い出などのように意識して思い出せるもの、口頭で説明できるものを指します。
英語の勉強においては、単語の意味を覚えたり、文法を理解して解説する場合などが該当します。例えば、以下のような説明をした場合、これは顕在記憶に該当します。意識的に理解している知識ですね。

英語では、主語がIとYou以外で単数の場合、さらに現在形の場合は動詞に(e)sをつける必要があります。

My girlfriend likes to watch movies but I prefer to read books.

潜在記憶(Implicit Memory)

手続き的記憶(Procedural Knowledge)とも呼ばれ、無意識的に使える知識のこと指します。例えば、自転車に初めて乗るときには、バランスのとり方を意識して覚える必要がありますが、一度乗れるようになってしまえば、自然と身体がバランスを覚えています。むしろ、そのバランスのとり方を言葉で説明することのほうが難しいですよね。言葉の習得で考えてみると、私たちは日本語のNative Speakerですが、以下のような質問を日本語学習者に質問されたら、皆さんは『日本人としての感覚』を説明できるでしょうか。

  • 日本語で「わかりにくい」と「わかりづらい」は何が違うんでしょうか。
  • 「ドンドン」「トントン」「ガンガン」「バンバン」「パンパン」は何が違うんでしょうか。

会話力には潜在知識が必要

会話において必要なのは、潜在記憶と顕在記憶のどちらでしょうか?
当然のことながら、潜在記憶としての英語の知識が必要です。そもそも、思い出そうとして単語の意味を考えたり、文法を考えてしまっていては、リアルタイムの会話に追いつけないですし、考えるという行為に脳のエネルギー(認知リソースと言います)を使ってしまいます。結果的に、話す内容はもちろん、発音など他のところに脳のエネルギーを使うことができません。

逆に潜在記憶であれば、無意識的に単語や文法などが口から出てくる状態なので、考えるというプロセスが発生せず、脳のエネルギーも使いません。だからこそ、内容に100%集中して中身のある議論などができ、リアルタイムの会話にもついていけるということですね。

ではTOEICの知識が何に役に立つかというと、顕在知識としてしっかり定着しているという点です。日本語のNative Speakerである私たちは、日本語についての顕在知識をあまり持っておらず、多くは潜在知識です。いわゆる感覚的に使っている状態です。

それに対して、第二言語として学んでいる英語は顕在知識を入口として覚えましたが、練習により無意識的に使える潜在知識に変えることができるのです。これを自動化といい、そのための練習として効果的だと言われているのがシャドーイングです。(ここではシャドーイングの説明は省略します)

TOEICの勉強を通して身につけた英語の顕在知識は、それだけでは使えませんが、使える英語のための土台にはなっているということです。なので、TOEICに限らずあらゆる英語の資格試験を通してしっかり英語の学習をしてきた方は、英語環境に行くと数か月程度である程度話せるようになってしまうケースが多くあります。持っていた知識をスムーズに使える知識にすることに成功した例ですね。

(番外編)TOEICでスコアが取れない帰国子女

英語が流ちょうに話せる帰国子女でも、TOEICのスコアは800点程度になってしまうことはよくあります。もちろん人にもよりますが、一見すると英語のNative Speakerのように話すのに、資格試験になるといまいち成果が出ない。そんなこともあります。
私もECC時代やオンライン英会話の講師をしていたときに、こういった受講生によく出会いました。リスニングはほぼ満点のスコアをとる一方で、リーディングができないのです。

こういった例も踏まえて、TOEICのスコアはあてにならないと言われたりします。もちろん、スコアが高い=英会話ができるというのは必ずしも正しいわけではありませんが、しっかりとした英語力を持っている方は、英会話はもちろんですが、ある程度対策をすればTOEICでも900点以上のスコアがとれます。

例えば、先ほどの潜在知識で説明した日本語文法の「わかりにくい」と「わかりづらい」の違いですが、言葉では説明できなくても、日本人は感覚的に当然ながら使い分けています。なので、日本語能力試験と呼ばれる日本語学習者が受ける試験で、最難関のN1というレベルでもまったくわからないということはありえません。まあ多少間違えるかもしれませんが。

ではなぜ一見すると英語のNative Speakerのように見える帰国子女の場合、それがありえてしまうのか。これは生活言語学習言語という2つの外国語のレベルに基づいていると思います。

生活言語BICS(Basic Interpersonal Communication Skills)と呼ばれ、文字通り生活で使われる言語です。例えば、買い物のときや挨拶などの生活場面での対人コミュニケーションを指しています。大体2年くらいで習得できてしまいます。友人との会話なども当然問題なくできるので、帰国子女は一見するとNative Speakerのように見えるということですね。

学習言語CALP(Cognitive Academic Language Proficiency)と呼ばれ、生活言語よりもさらに抽象度の高い内容だったり、より考えるという行為が必要な場面での言語を指しています。例えば社説的な文章の内容を理解したり、学校であれば文章読解問題などがこれにあたります。感覚的にも何となく脳のエネルギーを使いそうな感じがしませんか。Cognitiveは認知的という意味ですが、その文字から想像できる通り、「考える」というプロセスが発生するものです。習得には5年はかかると言われています。

生活言語と学習言語から見た比較

私たちは日本語が母語にも関わらず学校で国語を学びます。小学校の国語の授業では、主語や述語などの文法用語を使って日本語文法を勉強し、高校生になっても現代文を勉強しますね。そして、日本語のNative Speakerでありながら、現代文のテストでは満点がとれません。少なくとも私は、ですが。(笑)

もうお分かりかもしれませんが、これらは学習言語であるCALPが求められています。抽象的な内容の理解や論理的思考が求められているわけです。帰国子女のケースに話を戻すと、年齢にもよりますが、例えば小学生や中学生程度であれば生活言語は1年から2年程度でまったく問題なく話せるようになります。
しかし、英語で抽象的なことを理解する、考えるということはまだまだ年齢的に経験も足りません。仮に日本語であっても、小学生の子どもがディスカッションはできないですよね。

TOEICのリーディングではCALPの力もある程度求められています。複数の文章にまたがった情報の処理も必要になります。確かに言葉遊び的なゲーム感はTOEICの試験では一部あるかもしれませんが、それでも学習言語を測る一つの指標にはなっていると思います。なので、英語が流ちょうな帰国子女だからと言って、必ずしもTOEICで高得点が取れるわけではないということです。

まとめ

TOEICの勉強をすることが、英会話に役に立たないということは決してありません。しかし、TOEICの勉強をしたからといって、英語が話せるようにならないというのも事実です。

TOEIC以外にも英語の資格試験はたくさんありますが、それらの勉強を通して、実は結果的に学習言語であるCALPを養成することにつながっています。CALPで求められる力は日本語でも英語でも本質的には変わりませんし、同じ言語の能力として共有できると言われています。

TOEICの勉強を通して結果的に英語力はもちろん、国語力も少なからず高まるのです。そしてそれらは、英会話においての確かな土台にもなります。TOEICだけで英語力は測れませんが、一つの指標として取り組むことは意味がある学習だと思います。もちろんそれだけで終わらず、しっかり英会話の練習を通して、使える英語力にしていきたいですね。
ではまた次回をお楽しみに。