ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。
皆さんは英語学習で、声に出す練習をやっていますか?
声に出す練習はいろいろと種類がありますが、正しいやり方で行えば、スピーキングやリスニングはもちろん、リーディングやライティングにまで効果があるとされています。
そこで、今回の記事では様々な声に出す練習の特徴やそのやり方、それぞれのメリットを解説していきます。この記事を読むことで、自分が取り組むべき練習方法が理解でき、さっそく今日から正しいやり方で実践できるようになります。
また、声に出す練習に関する疑問の中で、最も多く聞かれるものを最後にFAQとしてまとめています。皆さんの疑問の解決になるはずなので、ぜひチェックしてみてください。
目次
声に出す練習のメリット
英語を声に出す練習は正しいやり方で実施すれば、非常に効果のある練習です。その効果をザっと次にまとめました。
音声面でのトレーニングになる
音源も使いながら声に出す練習をするため、発音の練習になります。英語らしい発音で話せたらカッコいいですよね。また、音源のスピードを意識した練習もすることで、自然な英語のスピードで話せるようになります。
英語のまま処理するクセがつく
声に出す練習をする際に、スクリプトを使って練習をします。そのときに、スクリプトの英文の文法的・意味的切れ目を理解して読むことになります。息継ぎのタイミングなども大切ですね。これは、結果的に英語を英語のまま理解することにつながり、いわゆる返り読み(英文を最後まで目を通してから読むこと)をしなくなることにつながります。
インプットとアウトプットにつながる
音読練習を通して、様々な単語や表現、フレーズを覚えることができるので、インプットがどんどん増えていきます。そして、そのインプットの内容を声に出していくため、知っている知識を使える知識にしていくことができます。(自動化としての効果)
結果的に、スピーキングやライティングでもそれらのインプットを使うことができるようになります。
声に出す練習の特徴とやり方一覧
ここでは、4つの練習に関して、それぞれの特徴とやり方を解説していきます。
目的意識を持って取り組めるように、それぞれの練習のメリットを正しく理解しましょう。
音読(音源使用なし)
音読は文字通り、自分でスクリプトを読むことです。正しい発音を確認するために、音源を聞いてもOKですが、声に出して読む際は音源を使用しません。あくまで、自分で声に出して読むだけです。
音読練習のメリットは2つあります。
- スクリプトを英語の語順のまま処理できるようになる
- 読むスピードは自分で決められるので、発音や意味に意識を向けることができる
特に❷のポイントは大切です。
いきなり音源を使ってシャドーイングをすると、わけもわからず音源をマネして話すことによくなります。結果的に、声に出すのに精いっぱいになってしまいます。そこで、まずは音読練習で自分が読めるスピードで練習をしていくことが必須になります。
自分で読む際、読むスピードは自分で決めることができます。発音に意識を向けたり、文法的・意味的な区切りを意識して読むこともできます。音源を使わないからこそ、自分が練習したい箇所を意識的に鍛えることができるのが大きなメリットです。
リッスン&リピート
この練習では、音源を使用します。ですが、会話などの長めの英文でも、1文単位で練習をしていきます。1文聞いたあとで、それをリピートします。その際に、当然ながらスクリプトは見ません。
リッスン&リピートは、主に音声の正確な理解を確認するのに役立ちます。
例えば、動詞の過去形、それから冠詞や前置詞などの細かい音まで正確に再現できているかを確かめることができます。
ただし、聞いた文章を頭の中に保持して再現するうえで、長い文章ではそもそも実施が難しくなります。記憶力の勝負ではありませんので、接続詞などを伴う長い文は区切って実施でもOKです。
オーバーラッピング
オーバーラッピングは有名な練習なので、ご存知の方もいるかもしれません。
スクリプトを使用し、音源と全く同じタイミング、スピードでかぶせて読んでいく練習です。基本的には、ある程度のまとまりのある会話などを題材にノンストップで実施します。
この練習では、主に音声面での効果が大きなメリットです。
単語単位はもちろん、文章全体のイントネーションを鍛えることができます。また、音源のスピードにかぶせて読むので、必然的に英語を自然なスピードで話すことができるようになります。
シャドーイング
おそらく声に出す練習で一番有名な練習がシャドーイングでしょう。
オーバーラッピングとよく似ていますが、シャドーイングではスクリプトは使用しません。また、音源と同時ではなく、1単語から2単語くらい遅れて、音源を追いかけて声に出していく練習です。
シャドーイングのメリットは、やはり何といっても英語の処理速度が上がることです。聞いてすぐに自分でも声に出して再生していく練習です。『考える』というプロセスを挟まないので、英語を英語のまま処理していくことになります。ただし、スクリプトを見ないで話す以上、オーバーラッピングのようにイントネーションなどに意識を向けることは難しくなります。
声に出す練習のFAQはこちら
ここまでの内容を含めて、声に出す練習に関してよくある疑問をまとめました。
ぜひ参考にしてください。
【全般】取り組むトピックのレベルは?
読んで理解できるレベルが最適です。基本的には自分が思うよりも1つ下のレベルを選びましょう。
基本的に、人間は同時に複数のことに注意を向けるマルチタスクをこなすことが苦手です。なので、使われている単語や内容が難しすぎると、ただ意味もわからず声に出すだけの練習になってしまいます。確かに口の運動にはなりますが、結果的に声に出す練習の良さを生かすことができません。
TEDやNetflixなどでの練習は基本的には上級者向けです。
そこで私のおススメは、レベルごとにわかれている音読用の教材を使用することです。アルクが出している【究極の英語リスニング】は使いやすく鉄板の教材ですね。
いくつかレベルがありますが、究極の英語リスニングVol.2はTOEICで言えば500点~600点くらいの方であれば十分理解できるレベルです。また、ビジネスパーソンの方であれば、究極のビジネス英語リスニングVol.1を見てみてください。実践的であり、かつレベルも取り組みやすいレベルです。
【全般】それぞれの練習で難易度に違いはある?
とにかくシャドーイング最強神話があるかもしれませんが、ぶっちゃけかなり難しいです。
スクリプトも見ずに音源と同じスピードで再生するので、負荷の非常に高い練習だからです。
そこで、使う題材のレベルにこだわるのはもちろん、まずはしっかり音読やリッスン&リピートができるように練習をしましょう。内容も理解したあとで、オーバーラッピング、シャドーイングへと進みましょう。
難易度はこんなイメージで、この順番通りに進めると確実にできるようになっていきます。
【音読 < リッスン&リピート < オーバーラッピング < シャドーイング】
※初見の文章でシャドーイングをする練習もありますが、ここでは割愛
【リッスン&リピート】適切な英文の長さは?
先述した通り、記憶力の勝負にならないように注意が必要です。
2秒までの長さであれば、ワーキングメモリの観点から頭の中で処理ができるようです。それ以上の長さであれば、接続詞や関係代名詞などのかたまりで区切ったほうが良さそうですね。
ちなみに2秒の英文はこれくらいです。大体7~8単語くらいですね。
【オーバーラッピング&シャドーイング】完成度のチェックは?
これは録音することをおススメします。
どちらの練習でも長めの英文を読み続けるので、声に出しながら自分の正確さを確認する余裕はあまりないはずです。
自分の音声を録音して、意識して取り組んだポイントをもとに振り返るようにしてみましょう。
- 特定の発音を含んだ単語(thの音やsi/shiなど)
- 文全体のイントネーション
- 単語の強弱(重要な単語とそうでない単語で強弱をつけれているか)
【シャドーイング】何回やれば完成と言える?
目安は最大10回程度としておきましょう。
ここでは『再生率』がキーワードになります。再生率とは、自分の音声がどれだけ音源に近づいたかを表しています。ある研究によると5回から10回くらいまでは、練習すればするほど自分の音声は音源にあわせて上達していきます。
ですが、10回を超えると、練習を重ねても、あまり上達は見られなくなるようです。これは、練習が足らないというわけではなく、今の英語力では再現できないレベルということでしょう。
10回くらいシャドーイングを繰り返し、感覚的に80%くらいの完成度になれば、次のトピックに移りましょう。こうして、様々なトピックに触れていくうちに、英語力そのものが上がります。その結果、以前はうまくできなかったトピックでも、シャドーイングができるようになっていきます。
【シャドーイング】自分の声が邪魔で音源が聞こえない場合は?
必ずイヤホンやヘッドホンを使って練習しましょう。
スピーカーで練習をすると、音源の音声を確実に聞き取って声に出すことが難しいかもしれません。
まとめ
声に出す練習に関して一切出し惜しみなくお伝えしましたが、いかがだったでしょうか。
機械的に取り組むのではなく、それぞれの練習に目的意識を持って取り組むようにしたいですね。
学習の質を上げるべく、さっそく今日の練習から生かしてください!
それではまた次回。
(補足)専門書なので非常に難しい本です。興味がある方のみ覗いてみてください。