ご覧いただきありがとうございます。英語教育者の永田勝也です。
今回は英語学習で100%必須なリスニングを取り上げます。皆さんは自分のリスニングのスキルを100点満点で表すと、何点くらいだと思いますか?
もちろん基準は人それぞれ異なると思いますが、資格試験英会話においても、やはり一番重要であり、ベースになるのはリスニングです。英会話の場面でも、そもそも相手の話を理解することができなければ、会話自体ができませんよね。
一方で、それだけ大切なリスニングの適切な学習方法がイマイチわからずに、「全然聞けるようにならない・・・」と困っている方もたくさんいます。
そこで、リスニングに対して悩んでいる皆さんに、TESOL(英語教授法)で第二言語習得論も学んだ私がサルワカで徹底解説していきます!読んだその瞬間から実践できる内容です。
目次
リスニングの落とし穴:聞きまくっても上達しない
いきなり結論ですが、聞きまくるという練習では、リスニングは上達しません。
正確に言えば、多少上達はするけど膨大な時間を費やすことになってしまいます。そんなコスパの悪い勉強、できれば避けたいと思いませんか?
今はYouTubeやPodcastなど、リアルな英語に触れる機会が世の中に溢れています。しかもその大半が無料です。それだけ良質なリスニングのコンテンツがあるからこそ、やはり戦略的に勉強していくことが必要です。
何と言っても、リスニング学習は取り組む順番が大切なんです。そして、その順番の根拠になるのが、第二言語習得論で言われる科学的なリスニングの仕組みです。そんなポイントを解説していきます。
リスニングに必要な2つの能力
リスニングの仕組みを理解するうえで、理解すべきキーワードは音声知覚と意味理解です。
音声知覚=音と文字が一致している状態
まずはこちらの文章を聞いてみて、正確に一言一句聞き取れるか確認しましょう。
ムズいわ!
そんなことを多くの方が思ったかもしれませんが、あえて難しい例文をWeblioから引用しているので安心してください。
ちなみに、“That efficiency will drastically deteriorate.(その効率は大幅に悪化するでしょう)”と言っていました。この文章の中で使われている単語、なかなかレベルが高いですよね。音声知覚とは音と文字が一致している状態を意味していますが、まず大前提をお伝えします。
それは、【知らない単語は聞けない】というものです。
deteriorateという単語は英検準1級から1級のレベルの単語なので、知らない方も多いはずです。知らない単語は何度聞いても、何となく音はわかるかもしれませんが、単語そのものが頭に浮かぶことはありませんよね。そして、その状態では、当然ながら意味を考えることもできません。逆に言えば、リスニングは自分が知っている単語(インプット)をベースに聞き取っているということです。
あわせて、音声変化の理解も重要になります。単語そのものは知っているけど、リスニングになると聞けない現象の正体は、大体これが原因です。
【自分が予想していた発音と違う発音で読まれると、知っている単語でも認識できない】という現象ですね。
ちなみに日本語でも同じ現象は当然ながら起こります。身近すぎて感じることはないかもしれませんが・・・。
次の文章、皆さんは絶対に文字通りに発音していないはずです。
おはようございます!
今朝のあいさつを思い出してみてください。おそらく「おはよーざいまーす」のような感じで、発音しやすいように音を変化させていませんか?
その音声変化には多少なりとも個人差はありますが、英語でも同様のことが起こります。言語は発音しやすいように、変化するものなんです。
ということで英語に話を移し、今度は別の文章を聞いてみましょう。
一言一句聞き取れるでしょうか。
短い文ですが、リエゾン(連結)やリダクション(消失)と呼ばれる音声変化が詰まった例文なので、完璧に聞き取れなかったものもあったかもしれません。
音声は“Where can I find the old meeting room?”と言っていました。ちなみにこのような音声変化は、リアルな英会話はもちろん、英検やTOEICなどの資格試験でももちろん見られます。ですが、ここで朗報です。
音声変化のルールは、基本的に5つしかありません。
文中の単語そのものを知っていることが前提ですが、音声変化の5つのルールを覚えることで、確実に聞けるようになります。気になった方は、【英語 音声変化】でググりましょう。一発で出てきますよ。
意味理解=音声知覚ができた前提
TEDやNetflixを使ったリスニングの勉強も、絶対にダメという訳ではありません。ですが、わからない単語や表現がてんこ盛りな内容を聞き流しても、残念ながらほとんど聞き取れずにBGMになってしまいます。おそらく知らない単語や表現の意味を調べることもしませんよね。
映像があれば、なんとなくわかった感じはあるかもしれません。ですが、実際にはリスニング能力という意味では、そこまで向上しているわけではないんです。ただし、リズムや英語特有のイントネーションなどに対する理解は上がりますし、聞き流すことで少なからず無意識的に学習している要素もあるようです。
いずれにしても、大前提としてリスニングの学習ステップは、まずは音声知覚が正確にできるか。これにかかっています。そのためには、自分のレベルにあったコンテンツを選ぶことが大切ですし、音を確実にとる練習が必要です。それができて初めて、聞きながら意味が理解できるようになります。もちろんそのためには、ときには1文単位やさらに細かく区切って何度も反復することが必須です。
あくまで、音声知覚ができていること前提で、意味を理解しようと取り組むのが意味理解です。
- 知らない単語は聞いても認識できない
- 文中での音声変化の知識も音声知覚には必要
- 音声知覚ができて初めて意味理解に進むことができる
今日から実践!正しいリスニング学習の進め方とは?
音声知覚と意味理解というリスニングの仕組みがわかったので、それをさっそく実践に移していきましょう!
以下のステップで進めていくことをおススメします。
- 自分のレベルにあったリスニング用の題材を選ぶ
- 試しに聞いてみる
- スクリプトを見て、単語や表現などを確認する
- スクリプトを見ながら、音と文字が一致するように練習する
- スクリプトを見ないで、意味が浮かぶように練習する
ここからは、それぞれのステップにおける学習のコツをお伝えします。
自分のレベルを把握するならTOEICはダメ!
英語の資格試験として日本で一番メジャーとも言えるTOEICですが、いきなりリスニングの教材として使用するのはあまりおススメしません。
なぜならTOEICは、すべてのレベルの方がもれなく同じレベル問題を取り扱うからです。TOEICの問題を使っても、それが自分にとって適切なレベルの内容なのか判断が難しくなってしまいます。
そこで完全無料でできる自分のリスニング力チェックの方法をお教えします。
ズバリ、英検を使いましょう。
英検は中学生や高校生が受けるイメージがあるかもしれませんが、非常に一般的なテーマを取り扱っていますし、だれにとっても勉強になる素晴らしい題材です。何より、レベルに応じて問題がわかれているので、自分にあったレベルを把握するためには最適です。
しかも、英検は過去問が完全無料で見れてしまうため、コストをかけず勉強ができるところも素晴らしいです。
英検の公式サイトで過去問を試してみることができるので、リスニングの問題の一部を実施してみて、自分のレベル感を把握しましょう。8割ぐらい理解できるレベルのものがリスニング練習に最適です。もちろんスクリプトも見れますよ!完全無料の最強学習ツールの一つです。
ちなみに、英検2級の内容で8割くらい理解できるのであれば、TOEICの題材を扱っても大丈夫です。それまでは、まずは英検を題材に進めていき英語のリスニング能力の土台固めをすることをおススメします。
スクリプトを使いこなす練習が必須
自分のレベルを把握したら、あとは練習あるのみ!
ただし、ここでも聞きまくるだけではなく、しっかりスクリプトを使いこなしましょう。スクリプトとは、リスニング音声の台本のことです。リスニングで力をつけている方は、スクリプトを使い倒す学習を100%しています。皆さんも以下の具体的な練習方法を参考に進めてみましょう。
- まずは短い会話や1文だけでもいいので、スクリプトを見ないで聞いてみる
- スクリプトを確認し、聞き取れた音が正しかったか確認する
その際に、知らない単語、知っていたけど聞き取れなかった単語を区別する - すべて知っている単語、聞き取れる単語にしたら、聞きながら意味がとれるように反復
ちなみに知らない単語に出会った場合は、しっかり覚えましょう。単語暗記は必須です。
そして、知っていたけど聞き取れなかった単語は、音声変化に問題があるのか、スピードに原因があるのか、聞き取れない原因を考えましょう。
スピードに課題がある場合は、1文をさらに細かく区切り聞いてみるのもアリです。そうして自分が一度に処理できる量を少しずつ増やしていきます。
反復の段階までくれば、1文単位と言わず、会話全体を聞き流したりして、無意識的に意味が取れる状態を目指します。そんな状態を自動化と言います。
声に出す練習は目的を理解すること
音声変化など発音で課題があった場合は、自分でも声に出してみる練習がおススメです。その際に、ただ何となく声に出すだけではなく、音声変化の部分を自分でも再現しようとする意識的な練習をしましょう。
【発音できる音は聞けるが、発音できない音は聞けない】
こんなことを言われることがありますが、これはあまり正確ではありません。
なぜなら、発音できないけど聞ける音は確かに存在するからです。発音を正しく認識できていれば、たとえ自分が発音できなくても、聞いて理解することは可能なんです。
なので、声に出す練習では、音源のように発音できないからといってシャドーイングを何十回もやる必要はありません。シャドーイングは最大で10回程度で十分です。音声変化に意識を向けて練習をすることで、無意識的にその音声変化を認識できるようになるのです。
あくまでゴールは、聞いて理解できる英語の思考回路を作ることであり、音源を完璧に自分でも発音できるようにすることではありませんので、ご注意を!
まとめ
リスニングの科学的な仕組みと、それを生かした練習方法を今回はお伝えしました。
参考になったでしょうか?世の中には素晴らしいリアルな英語の題材が溢れかえっています。だからこそ、その中で自分にあったものを正しいやり方で進められるような英語学習のリテラシー(Literacy; 能力)が必要です。
今回の記事を参考に、さっそく今日からのリスニング練習に生かしてくださいね。
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